林業 | 2018年8月6日
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日本は世界的に見ても森林保有率の高い国です。古くから緑豊かな森、清涼な空気、澄み切った水を「自然の恵み」としてきましたが、これらはみな「森林の多面的機能」がもたらす恩恵でもあります。森林の多面的機能と文化的機能に林業はどんな影響を及ぼしているのでしょうか?
森林の多面的機能と文化的機能、双方の機能の説明を含めてみていきましょう。
日本全土に広がる森林は、水源の涵養をはじめ、人々が暮らしやすい快適な環境の形成、生物多様性の保全、温暖化の防止など、様々な形で国や日本国民の生活を支えています。これらの森林の持つ機能を「森林の多面的機能」と言います。
森林の多面的機能とは具体的にはどのような機能なのでしょうか?下記にまとめてみました。
・生物多様性保全
日本の森林には、草や樹木、コケ類菌類はもとより、鳥類など約200種類が生息し、昆虫類が二万種存在すると言われています。
健全な森林はこれら動植物の生息、生育の場となっており、遺伝子や生態系を保持するという根源的な役割も担っています。
・地球環境保全
日本の森林は、二酸化炭素を吸収し、蒸発散作業を行います。日本の森林が光合成によって吸収する二酸化炭素は約1憶トンと言われており、世界規模で言われている二酸化炭素による地球温暖化を抑止するためにも重要な機能です。
・土砂災害防止機能/土壌保全機能
樹木をはじめ、草木などの森林の下層植生や落枝落葉が地表を覆い、健全に張った根が雨による表面土壌流出を抑えます。これを土砂災害防止機能と言います。また枯れた落ち葉などが土壌に養分を与え、その養分が河川をつたい海への栄養供給へとつながります。
これを土壌保全機能と言います。土砂災害防止機能と土壌保全機能は人々の暮らしにダイレクトに影響を与える多面的機能の一つです。
・水源涵養機能
森林の多様性機能の中でも重要なのが水源涵養機能です。
森林の土壌が雨水をろ過しながら貯水し、河川へ流す水の量を平準化するばかりか、川の水量を安定させるため、洪水を防ぐ機能があります。
また森林にろ過された水は浄化されているので、豊かな清流を生み出します。
・快適環境形成機能
森林は二酸化炭素を吸収して酸素を生み出しますが、その時に蒸散作用も発生します。
この蒸散作用により夏の暑い気温を下げ、冬の極寒の温度を上昇させるなど気候の緩和に役立ったり、防風や防音、塵や埃の吸着もしてくれるので快適な環境を作り出してくれます。
・保健レクリエーション機能
森林には人の心を安らかにする効果があるとされています。例えば森林を歩いたり、森林を眺めていると、副交感神経活動が高まり、生理的にリラックスするという研究成果があります。また樹木から発されるフィトンチッドという揮発性物質に健康増進効果があると言われています。
・物質生産機能
森林は木材を生産するほか、山菜やきのこなど森の恵みをもたらしてくれます。
森林の「文化的機能」とは森林の多面的機能の中の機能の一つです。森林のランドスケープ(景観)や行楽や芸術の対象として人々に感動を与え、古来よりの伝統文化を伝承する為の基盤として日本人の自然観の形成に大きく影響しています。
例えば、春の桜、秋の紅葉などは森林の景観を楽しむための文化的機能です。また寺社仏閣にはご神木とする木や、霊木などの、厳かで神秘的な信仰の対象となりうる木も存在し、人々の心の支えとなっている面もあります。
林業は森林の多面的機能や文化的機能に大きく影響しています。上記で記したような生物多様性保全や、地球環境保全、土砂災害防止機能、水源涵養機能は、森林が「健全な状態」であることで成り立つ機能です。
その森林の機能を生み出すのが林業であり、林業は多面的機能や文化的機能の作用に大きな役割を果たしています 。
森林の持つ多面的機能について
www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/
森林の様々な役割
www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/worldforest/index2.html
森林の伝統文化機能
https://www.ffpri.affrc.go.jp/shoho/n48-05/048-3.htm
森林の多面的機能と我が国の森林整備
www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/25hakusyo/pdf/5hon1-1.pdf
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