林業 | 2018年8月6日
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どんなにまっすぐ伸びた樹齢50年の杉の木でも、はじめは小さな苗でした。人工林は主伐をした後に新たな苗を植栽し、それを保育して再び森へと育てます。そのスタート地点である苗木が、実は一番コストがかかる工程であることはあまり知られていません。
林業でも重要な苗木生産の現状とその課題について詳しく見てみましょう。
林業の最盛期と比べ、現在では苗木の生産は著しく低下しています。
その理由は「主伐がおこなわれていなから」というとてもシンプルなものです。戦後復興のための拡大造林政策として、伐採跡地に杉やヒノキなど比較的成長の早い木だけをたくさん植えました。しかし苗が育つのを待てずに外国産の安い木材の輸入が始まり、国産材の需要が低下。林業経営は次第に厳しい状況になり、雇用の低迷が続いたことから、若手の林業従事者が激減し、既存の林業従事者の高齢化が深刻となってきました。
常に人手不足な林業の現場では、間伐だけ実施し主伐を控える傾向にあります。結果的に山は主伐を迎えた木が放置された状態となりました。そのため、いつまでたっても植栽が行われないので苗木を育てることもできません。その悪循環が現在の林業において、苗木生産が低下している理由でもあるのです。
林業で使う苗木は「ポット」が主流でした。一つ一つのポットに苗が入っているポット苗では、ポットの側面や底面部分で根が回ってしまう「根巻き」という現象が問題とされていました。根巻となった苗をそのまま植栽すると、育成中に根が締め付け合い、苗の成長に悪影響を及ぼしてしまうからです。
そこで開発されたのが「コンテナ苗」です。コンテナ苗とは硬質樹脂製の多孔容器(マルチキャビティーコンテナ等)で育成された「鉢付き苗」の事で、細長い根鉢に根が伸張、充満することでコルク栓のような形に成型されます。中には仕掛けがあり、リブと呼ばれる突起物が側面に接触した根を下へ成長させるので、根巻き問題をクリアできます。
さらに「根鉢」と呼ばれる状態で植栽する為、植栽した後に問題なく成長しやすいというメリットがあります。
長い時間かけて育成する樹木は最初からいい苗でないと良質な木材を量産し続けることはできません。
そのため「優良苗木」の育成も含め、低コストで優良な苗木の量産が課題となっています。
苗木の育成は種から苗にするまで3年の月日を要すため、林業の工程の中でもコストカットできない事が問題とされてきましたが、コンテナ苗は従来のポット苗よりも低コストで量産することが可能なため、林野庁で積極的な取り組みを推奨しています。
まだ新しい苗木生産の為、全国隅々まで普及しているとはいいがたいのですが、徐々にシェアは拡大しています。
現在、林野庁を中心に各方面でコンテナ苗の育苗方法についての研究が進められており、全国各地で苗木生産者を対象にコンテナ苗生産の技術研修や巡回指導などを実施しています。
一般社団法人岐阜県林業経営者協会 森林財産復活への道
https://www.g-rinkeikyo.jp/wood-life/会員のぼやき/林業のカギを握る-苗木/
桐生タイムス 苗木の生産・安定供給へ 住友林業の新施設が完成
再造林で活用が期待されるコンテナ苗
http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/kysmr/data/mr0102k1.htm
コンテナ苗ってなに?
rashinban-mori.com/article/2016/02/コンテナ苗ってなに%ef%bc%9f/
林野庁 林業種苗生産
www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/syubyou/syubyou.html
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